私たちは中高校または大学で英語を学び、センター試験を目指すレベルであれば
約5,000語以上の語彙と文法を習得しています。
街の書店では英語学習に関するありとあらゆる書籍が並び、日本でアルファベットを書けない人間を探すほうが難しいです。
なのに、国際的に英語力を測定すると下から数えて何番目という有様です。
日本人の多くが英語を苦手とする理由は何なのでしょうか?
私は、自らのイギリス留学や30年間の講師経験を経てその解答にたどり着きました。
それは、日本語が持つ、特有の「しくみ」のせいだったのです。
この「しくみ」に依存しないクセを付けることで、脳の配線が一気に整理され、英語が日本語のように認知できるようになります。
この状態が英語脳覚醒といわれる状態です。
昨今、英語の教育方針で日本語は英語学習の邪魔になると考えられ、
「英語を本能で理解するために英語は英語で学ぶべきだ」
「いやいや、それでは足らない。他の教科も英語で学ぶべきだ」
という流れになってきています。
しかし、世界的な脳科学の裏付けからいうと、約10歳前後で母語が完成してからの新しい言語習得は、表層的にしろ、深層的にしろ、母語の言語回路を介さなければいけないのです。
それなら答えは一つ、英語は日本語を使って習得するしかないのです。
日本の英語教育のトレンドから見ると
「この時代に何をいってるんだ?」と言われるのは分かっています。
しかし、一定のレベルに達していない学習者が英語を英語で学んでしまう事は、いうなれば暗号を解読するようなもので、ただひたすら脳のストレスとなるだけなのです。
私はこのストレスが更なる学習状況の悪化につながっていると考えます。
ACTFL(全米外国語教育協会)の統計で英語でビジネスの補助ができる「Advance Low」レベルを習得するために、
日本人で約1320時間の英語の受講時間が必要と言われています。
しかしヨーロッパ系の生徒であれば、それが約480時間ですむという数字があります。
なんとそこには3倍近い英語習得時間の差が存在しています。
実際、イギリスに留学し猛勉強をしていた私は、彼らの英語の習得のあまりの速さに
「不思議だなぁ〜」と舌を巻いた記憶があります。
「何がそんな差となるのか?」私はここに大きな答えが潜んでいると考えました。
「発音がヨーロッパ系とは違うから」、「語源が違うから」とよく言われていますが、実際に調べてみると
英 語 : 母音 12 子音 24 ゲルマン語派
フランス語: 母音 12 子音 36 イタリック語派
イタリア語: 母音 5 子音 20 イタリック語派
スペイン語: 母音 5 子音 28 イタリック語派
ドイツ語 : 母音 11 子音 26 ゲルマン語派
日 本 語: 母音 5 子音 21 アルタイ諸語
とヨーロッパ系同士でも結構違うのがわかります。
発音は重要ですが、オウムやインコが言葉をそらんずる事を考えても、 ヒトだけが持ち合わせる本能とはいいきれません。
語源に関しても「ヨーロッパ系の言語は源流が一緒だから有利だ」といわれますが、前段で述べたように日本人でもセンターを狙うレベルであれば約5,000の単語力を持っています。
次に文法の特徴を見てみました。
ここでSVO型とかSOV型とか書いてあるのは、S(主語)V(動詞)O (目的語)の並び方のことです。
英 語 : SVO型(語順支配型)
フランス語: SVO型(語順支配型)
イタリア語: SVO型(語順支配型)
スペイン語: SVO型(語順支配型)
ドイツ語 : SOV型(語順支配型)※平叙文はSVO型
日本語 : SOV型(後置詞「てにをは」支配型)
ヨーロッパ系言語と日本語で大きな差がみられました。
それは言葉をコントロールする統語システム「支配型」の違いだったのです。
ヨーロッパ系言語は語順によって支配されるため、単語の役割によって配置する場所がきちっと決まっています。
ところが、日本語は後置詞「てにをは」によって、どんな順番に単語を置いても意味が通じてしまうという、世界でも数少ないシステムを持つ言語なのです。
我々は反対にこの複雑怪奇な統語システムを使いこなせるがゆえに語順の重要性が気薄になり、英語のような「語順支配型」の統語システムに対して脳が混乱を起こしてしまうのです。
逆も同じ事がいえます。
日本に住む外国人でも、いつまでも片言でぎこちない日本語しか使えない欧米人がいるかたわら、モンゴル出身の力士や韓国出身のタレントが短期間で流暢な日本語になっているのは、皆さんもテレビを見て感じていることではないでしょうか。
それは彼らの母語が日本語と同じ統語システムを持つからなのです。
それでは語順支配型言語への相関をいかに本能的・習慣的に行えるかが、日本人にとっての英語の突破口になる」
そう考えました。
まず、日本語にある「てにをは」システムの自由度を封じ、なるべくシンプルに英語とマッチさせるため、英語文法と日本語文法の最大公約数を出しました。
文法といってもグローバルスクエアで重視しているのは、学校で習う学術的な規範文法ではなく、人間の本能が作り出す言葉の自然法則、すなわち「言葉のルール」です。
そして導かれた答えは
・文の骨格
・動詞のかざり
・名詞のかざり
たった3つだけでした。
日英文法を役割別のたった3つに大整理できたので、日本語・英語のしくみの相関法もすっきりシンプルになりました。
シンプルになればなるほど直感的、本能的に操れるようになります。
ここから、当時教えていた受講生達のフィードバックが全く変わったのです。1990年のことです。
「英語がスーと頭に入るようになりました」
「英文が急にすらすら読めるようになりました」
「英語の勉強が楽しくなりました」
実際にこういった感想が増えたのです。
次ページで紹介をする「脳実験」を行って分かった事なのですが、
このような感覚は脳が沈静下した状態(バイリンガル状態)になった時に感じるものであることがわかりました。
すなわち、3つの言葉のルールが正しく機能し、脳の中で混乱が抑えられ、英語が言語として認知されるようになったのです。
「英語は英語で」というダイレクトメソッドは、ヨーロッパ系の学生のように母語が同じシステム「語順支配型」を持つ学習者に対しては抜群の学習方法になりますが、日本人のように統語システムが大きく異る学習者に対してはいかに日本語をうまく活用するかを考えた方が、はるかに効率的かつ効果的になるのです。